旅・自己否定・生きづらさ…マイナーな作品群にこそつげの魅力の本質が宿っている、かも?(『ユリイカ 増頁特集つげ義春』)

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今日は『ユリイカ 増頁特集つげ義春』をご紹介します。この本は、1982年に発行されています。代表作である『ねじ式』や『ゲンセンカン主人』が1968年の発表なので、それから14年後と言うことになります。

私は、漫画ではなく『貧困旅行記』をはじめとしたエッセイでつげ義春に惹かれていて、そのことは、つげ義春が描く孤独や侘しさはファッションなのか? という別の記事で書きました。私の中で、つげ義春の魅力は、ある程度言語化できたと思っていて、まとめ部分を抜粋するとこんな感じです。

  • つげ義春は、貧困や郷愁を描いているが、それは「社会にうまく適応できない」、「人と関わることが苦しい」といった「生きづらさ」の仮託された形である。
  • そして彼は「生きづらさ」の原因を他者や社会ではなく精神薄弱な自分自身に求めた。しかし、その克服は容易ではない。必然的に、それは自己否定への憧れとなり、一時的にでも自分自身から自由になれる「旅」に魅了された。
  • しかし、彼は安易に「旅」を肯定していない。精神薄弱な自分自身を何とか克服し、明るく行動的に家族や社会と接しようと藻掻いている。そのような葛藤が、彼の作品を特別なものにしている。

このユリイカでは、いろんな方が、つげ義春の作品批評や作家論を寄稿していいます。この頃になると、流石に『ねじ式』や『ゲンセンカン主人』に対する精神学的な分析・批評というものはなくてですね、むしろそれ以降のややマイナー、というか一般の方にはほとんど知られていないような作品についての批評が多いですね。例えば、こんな作品で、私もほとんど知りませんでした。

  1. 退屈な部屋
  2. 日の戯れ
  3. リアリズムの宿
  4. 夜が摑む
  5. 外のふくらみ
  6. コマツ岬の生活
  7. やなぎ屋主人
  8. 必殺するめ固め

私は、エッセイから入ったこともあって、漫画はそこまで惹かれていたわけでは無いんですが、今回このユリイカを読んで、旅・自己否定・生きづらさといったテーマの漫画作品は初めて知りました。これらの作品は、1970年代、私の好きな『貧困旅行記』とほぼ同時期に描かれているので、テーマ的にも近そうだというのは分かります。私が好きだからというのもありますが、ある程度、時間が経過した批評の対象となる作品の方にこそ、つげ義春という作家の本質が現れているかもしれません。

正直、このユリイカ、読む前は「もうつげ義春の魅力は整理できてるんだよな」と思っていて、若干今更感を覚えていたこともあって、つい積読期間が長くなってしまっていたのですが、そういう作品がある、というのを知ることができたのはすごくよかったですね。これらの作品を私が読んでいないこともあって、批評の内容自体はピンとこなかったんですが、読み終わってすぐ、本屋に行って、これらが収録されているちくま文庫を買ってきました。

まとめると

  • ややマニアックなつげ作品への批評や作家論が掲載されている
  • 旅・自己否定・生きづらさといったテーマの漫画作品を知ることができた

という感じでしょうか。

一般受けはしないでしょうが、つげ義春を深く知りたい人にはいいかもしれません。

本日は以上です。また次の読書でお会いしましょう。

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