クリックの向こうの知らない世界で、我々は何を創造すればいいのか Amazonの倉庫で絶望しウーバーの車で発狂した(本の小並感 177)

読書

クリックの向こうの知らない世界

昔、「電話の向こうの知らない世界」というサイトがあった。

管理人は商品先物の営業で、ゴリゴリのテレアポの実情など生々しく(かつ面白く)描いていて人気があった。現在でいう野村証券や光通信のYoutubeみたいなものだろうか。今ほど一般的には彼らの生態が知られていない中で、貴重な内幕だった(現在は閉鎖されている模様、残念。業界の圧力という噂もある)。

この本は、差し詰め「クリックの向こうの知らない世界」と言えるだろう。イギリスのAmazon物流センター、訪問介護、コールセンター、ウーバーなどで実際に働いた内幕を暴いている。

世界が直面する「どこでも同じ」問題

最初の感想は「どこも同じだな」だった。

移民が過酷な労働環境で使い捨てられるのも同じ(低度外国人材で描かれる、日本の技能実習生と似ている)、介護職の離職率が高いのも同じ、自殺率が高いのも同じ、コンビニのFCオーナーが従業員として認められないのもウーバーと同じ。

つまりこれは世界的な問題、世界共通の課題なのだ。

デジタル化した世界では究極、人的な労働力は必要ない。かつての産業革命などでも労働力の機械化で一時的に失業は増えただろう。コンテナ物語で、コンテナが実用化されることで沖仲仕が失業した点と似ている。それらはある程度の時間を掛けて、別の需要に移転することで吸収された。

しかし、今回のデジタル化による革命は、人間に何かを残すだろうか。それらは消費者に素晴らしいサービスをローコストに提供する一方で、必要なのはデジタルのデバイスやアルゴリズムの設計者、プログラマーなどであり、必要な人的資本はこれまでと比べ極端に少ない。それらは、極大化する格差と無関係ではないだろう。

金日成は言った。「人間の最も高尚な喜びは〇〇である」

常識的に考えれば、完全に機械化するまである程度の時間は必要であり、人間は新たな価値(それこそ介護のような)に市場を移転させるだろう。市場が健全に機能すれば需給のバランスが価格に転嫁され、現在のような過酷な労働環境ではなくなるはずだ。

しかし、金日成が言ったように、人間の喜びは(消費ではなく)創造にある。中長期的に、我々は何を創造すれば良いのだろうか。

 

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