[本の小並感 167]「低度」外国人材 我々は労働力を呼んだのに、来たのは人間だった

読書

ここ数年で外国人労働者が増えた。コンビニで日本人が店員をやっていると逆に驚くくらいである。私の住む地域は古い住宅があるのだが、解体現場でも重機を乗り回しているのだは大体東南アジア系の外国人である。

この本は、日本で働く外国人と、制度の利権に巣食う現地の送り出し機関、日本の管理団体の実態をルポしている。聞いたことない著者だったが覚えた。

恨みの深さが伺える、牡蠣養殖経営者の撲殺事件

ここ数年、テレビでも外国人技能実習生の悲惨な実態が報道される様になり、この本では彼らをその様な「かわいそうな被害者」としてステレオティピカルに扱うことを拒否している。ただ、その実態はなかなかブラックだ。

この本では元技能実習生のベトナム人が、自分が絶対やりたくない仕事として「牡蠣打ち」を挙げているが、2013年には中国人技能実習生が水産加工会社の社長を撲殺する事件が起きている。

2013年3月14日、遼寧省大連市出身(後述)の中国人研修生(以下、研修生)が工場の従業員を襲撃、工場の男性経営者社長(以下、経営者)と女性従業員の2名が死亡、工場の従業員合わせて6名が重軽傷(6名のうち1名は2013年3月14日報道によると重体)を負った。研修生は現場にて現行犯逮捕された[1]。経営者は胸などに多発刺傷、多発外傷があり、スコップで頭を何回も殴られ殺害[2]、女性従業員はスコップで頭を殴られて殺害された。

出典:wikipedia

この凄惨な事件の原因の一つに、言葉の壁や過酷な労働環境、職場における差別的な待遇による心身のストレスがあったことは想像に難くない。岐阜県の繊維会社では、従業員寮で女性の技能実習生の浴室が盗撮されている例などもある。

2019年末で外国人技能実習生は41万人だが、そのうち1年間で8,796名が逃亡・失踪しているのもそういう理由である。彼ら・彼女らの恨みの深さは、推して知るべきだろう。

制度の利権に巣食う、送り出し機関・管理団体

なぜこの様な悲惨な事態になってしまうのか。原因は複雑だが、外国人技能実習制度という制度の責任分担が複雑なことがあるだろう。

外国人技能実習制度の主なプレーヤーは下記の通りである。この本では、それぞれに当事者にインタビューを行なっているが、彼らは利害を共有するため、問題はない、あったとしても原因は実習生個人にあるという主張に終始する。そして、都合が悪くなるとそれぞれに責任を押しつけあう(例えば、聞いていたのと違う、というのは、送り出し機関が事前に十分に説明していないせいだ、など)。

  • 送り出し機関(海外にあり、技能実習生を募集し日本に送り出す)
  • 管理団体(日本国内にあり、技能実習生を国内企業に斡旋する)
  • 受け入れ企業(技能実習生に働いてもらう)

特に管理団体が恐れられている実態は、下記の部分から窺い知れる。

「こわい。クミアイから、ひとにはなすな、いわれた」(中略)

話を聞く際に、これだけ怯え切った表情を浮かべる相手は、私の普段の取材先である中国国内でも滅多に見ない。(あえて言えば、非常に深刻な少数民族弾圧を受けているウイグル人などであれば、こういった表情をする人がいる。)

ここでいうクミアイ(組合)は、日本の管理団体である。

技能実習生は多くの場合借金をして来日しており、管理団体から「懲罰」を受けて強制帰国させられることを恐れている。結果的に管理団体には逆えず、悪質な労働環境・セクハラ・パワハラを告発しにくい構造になっている。

このほか、送り出し団体も、政府や軍の高官が運営しており、強制帰国させられると国家の対面を傷つけたとして、罰金を課す様な悪質な団体もあるという。もっと言えば、元技能実習生が、その様な機関で働いている実態がある。

我々は労働力を呼んだのに、来たのは人間だった

念のため書いておくと、移民に寛容と自負する著者自身も、「この夫婦みたいな人たちが、これから日本で増えると嫌だな」と感じたという。彼らは、日本語身につける気もなく、知識を学ぶ気もなく、日本の社会に馴染もうとする気もない。他者の支援に頼り切る怠惰な実習生がいることも事実だ。

そして、移民の就労を厳しく制限する日本の政策。その制度的欠陥の隙間を縫い、利権に巣食う送り出し団体、管理団体。それらは全て、安価な労働力を求める日本企業のニーズに応えるためだ。国境を超えた労働需給のマッチング。それ自体はむしろ歓迎すべきことだろう。

しかし、だからと言って「これ」で良いのだろうか。

この本の中では、日本の技能実習期間が人生で最も悲惨な時期だった、と証言する実習生が登場する。「君の名は」が好きだという技能実習生は、映画に描かれた美しい日本が、自分が今働くこの岐阜であることを聞かされ絶句する。

アニメや漫画に憧れていた彼ら・彼女らの日本のイメージは、決定的に悪化することだろう。それは、長期的に日本という国の国家的なイメージを棄損していく。この本の副題「移民焼畑国家」のとおり、日本は東南アジアの情弱な労働者を使い捨てているのである。

きれいな建前の裏に抜け道を設けて実態に対応させることはよくあるが、パチンコにしても性風俗にしても、国家公務員の天下りにしても、その様な構造は利権の絡んだ陰湿な土壌を生み、何より国民の利益には貢献しない。

我々は労働力を呼んだのに、来たのは人間だった

戦後、ドイツの移民問題を論じる際にしばしば引用されてきた一説だ。技能実習生の制度も、いい加減にしてはどうだろうか。

コメント

  1. […] 移民が過酷な労働環境で使い捨てられるのも同じ(低度外国人材で描かれる、日本の技能実習生と似ている)、介護職の離職率が高いのも同じ、自殺率が高いのも同じ、コンビニのFCオーナーが従業員として認められないのもウーバーと同じ。 […]

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