みなさん、こんにちは。
今日は、『すごい古典入門 アーレント 人間の条件』をご紹介したいと思います。この「すごい古典入門」というのは、中央公論新社の新しいシリーズで、これが創刊号のようですね。
ハンナ・アーレントについては、名前は知っているものの、難しそうだなと感じて手に取ったことはありませんでした。今回、表紙にある「なぜ働かなきゃいけないの?」というメッセージに惹かれて読んでみました。
内容を私なりに要約すると、アーレントは活動的生活を「労働」、「仕事」、「活動」の三つに分類しました。
- 「労働」は、自然的強制。これは比較的分かり易くて、食費を調達することは、この労働に分類されます。
- 「仕事」は、この本では人工物の作成としていて、椅子や石碑を作ったり、従軍記者が兵士の活動を記事にするなどの行動を指しているようです。ここでは、文化的創造と(勝手に)しました。
- 「活動」は、この本では「新しいことを開始」としていて、奴隷解放という今まで当たり前だった奴隷制を否定するという全く新しい活動を指しています。ここでは、政治的営為と(勝手に)しました。
これらはチョー理解なので、かなりの確率で間違っている・不正確であると思われるので、ちゃんと理解したい方は本を読んでいただければと思います。
そして、古代では「活動」つまり政治的営為が最も高尚なものと位置付けられていたが、資本主義・社会主義の誕生によって現代では「労働」がもっとも重要な地位を占めることになっている、と言います。
『人間の条件』が出版されたのは1958年なので、今よりもはるかに社会主義というものが評価されていた時代です。資本主義が社会主義に移行することは歴史の必然と言われていました。
そして、本当にそれでいいのか?というのが、アーレントの問いなわけです。
先ほど見たように、人間には「労働」以外にも、文化的創造である「仕事」や政治的営為である「活動」があるわけで、自然的強制による「労働」を上位に位置付けてしまうと、それは必然的に生きることが目的化してしまう、という訳です。アーレントはこのことを、つまり生きること自体を目的化することを「最高善としての生命」として、批判的に捉えています。
という訳でアーレント的「人間の条件」をチョー理解すると、「自然的強制である「労働」から自由になり、文化的創造である「仕事」や、政治的な営為である「活動」に自分のリソースを振り向けること」という感じになるかと思います。
表紙に「なぜ働かなきゃいけないの?」という問いが記載されていましたが、それに対する答えを私なりに回答すると、働くには、労働・仕事・活動の3種類があり、労働から自由になり、仕事・活動に移行せよ、といったところでしょうか。やっぱり働かなきゃダメ、ということですね。
「自然的強制である「労働」から自由になる」というのは、現代的な用語でいうとFIREですよね。
『人間の条件』の出版から68年が経過し、社会主義の失敗が決定的となった現代では、ほとんどの人が「労働」を最も重要とは考えていないでしょう(宮崎駿くらいでしょうか?)。必要だから仕方なく労働しているし、だからこそFIREが話題になるのだと思います。『人間の条件』は、ある一面ではFIREの勧めと読めなくもないと思います。
注意が必要なのはFIRE自体を目的化してしまうということですね。それは、「最高善としての生命」、つまり生きること自体を目的とし、「仕事」や「活動」に踏み出さない状態に陥ってしまいます。それは「労働からの離脱」を最も重要なことに位置付けているという点で、「労働」から離脱できているとは言えないでしょう。FIREは手段、これは重要な指摘だと思います。
だから、問題は、自然的強制である「労働」からいかに離脱するか、今風に言えばFIREするか
そして、最高善としての生命をいかに拒否するか。ここが案外難しいように思いました。もし私がFIREしたら、何もせず怠惰な日常を送ってしまいそうですね。
そしてその先にどのような「仕事」や「活動」を成すか、ということが現代的な問いではないでしょうか。
最期にあさイチというNHKの番組に出演していたある女性のインタビューを紹介したいと思います。
この女性は、未婚で子供もいない高齢の方です。たしか高齢者の就業の実態についての特集で、経済的にはもう働かなくても生きていける状態にあったと記憶しています。ですが、彼女は「仕事」をしたいとおっしゃるんですね。
「何か最後に少しでも役に立ちたい」、「人生で最後にできることって、働く、そのくらいしかない」とおっしゃるんですね。
「人生で最後に残るものは、手に入れたものではない。与えたものだ。」といいます。会社はつらいことも多いでし、私自身もはやく辞めたいと思うことも多いのですが、「労働」ではなくこの本でいう「仕事」や「活動」は続けたいと思いました。
正直、この本は期待したような内容ではなかったのですが、自分の思考の整理になりましたし、ハンナ・アーレントが気にはなっているがハードル高いなと感じている方にとっては、彼女の思想を大雑把に理解するのに良いのではないでしょうか。
本日は以上です。また、次の読書でお会いしましょう。








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