こんにちは
皆さんは独立系の書店は行きますでしょうか。私はたまに行く独立系の書店が1つだけあるのですが、そこにいくと何かしら読みたい本が見つかることが多いんですよね。今回は、その書店で見つけた『ベラルーシ獄中留学記』を読んでみました。
エピソード
2024年の12月、海外撮り鉄の著者がベラルーシで鉄道を撮影中に逮捕され、約半年後に解放されるまでの体験記です。獄中の尋問、食事、排泄、いじめ、暴力から、日本大使館、そしてアメリカの支援まで、体験しないと分からない1次情報に溢れています。
尋問では、持っていたカメラやスマホは全て没収され、LINEなどのチャットツールはもちろん、XなどのSNSのDMも全て翻訳されチェックされます。著者の照井さんは、同じような海外撮り鉄仲間に影響が出ることを恐れ、最初ある人とはネットだけの繋がりで実際に会ったことはないと嘘をついてしまうのですが、実はその時相手は翻訳して全て知っていたと言うような、映画のようなシーンもあります。
意地悪く読もうと思えば、、、
この本を、自己責任という文脈で意地悪く読もうと思えば読めるかも知れません。
実際、両親や外務省の注意喚起を無視して、私利私欲のためにウクライナと対立状態にあるベラルーシに渡り、スパイと疑われても仕方がない行為をし、会社は長期間欠勤し、外務省や大使館に多大なリソースを割かせ、両親、友人などに心配をかけたうえ、その体験を本にして金銭的利益まで得ようとしている。「撮り鉄は日本だけじゃなく、海外でもやらかしてるのか、しょーがねーな」と感じる方もおられるかも知れません。
しかし、巻き込まれる方々は気の毒なのですが、私は後先の見境なく自分の情熱にフルベットする著者を見て、登山家の山野井泰史さんを思い出しました。
自分自身を突き動かす情熱
山野井さんは、ヒマラヤなどの高所登山で実績のある世界的なアルパインクライマーです。チョ・オユー南西壁や、ギャチュンカン北壁といった数々の登攀が評価され、登山界のアカデミー賞と言われるピオレドール生涯功労賞を日本人で唯一受賞しています。
人類のアルパインクライミングの歴史に名前を刻んだと言ってよいのですが、そんな山野井さんも若い頃は危険なクライミングを繰り返して父親と大喧嘩をしたり、遭難しかけて救助されたりといった経験をしています。
山野井さんは「登山というものを知ってから、僕はずっと発狂してる」とか、「将来どうやって生活していこうということは考えなかった。次はどこに登ろうか、それだけをずっと考え続けてきた」ということを述べています。親や周囲の反対を押し切って、自分の内なる衝動にしたがって走り続けた結果、世界的な評価を得るに至るわけです。
人生を豊かで充実したものにしてくれるもの
この本の著者の照井さんもお父さんから非常に強い反対を受けます。それを無視して、このような事件を起こしてしまったりと、いろいろあるのですが、総じて照井さんが自分の人生を楽しんでいることが伝わってきます。
他人に迷惑をかけないということは、もちろん重要です。合理的な選択も、器用な立ち回りも必要かも知れません。
しかし、自分という存在を強烈にドライブする内なる衝動というのは何物にも代えがたいのではないでしょうか。破綻すると終わってしまうので、そこは注意が必要かも知れませんが、この本は単なるベラルーシでの個人的な体験記を超えて、最終的に自分の人生を豊かで充実したものにしてくれるのが何なのか、読者に投げかけているように感じました。
本日は以上です。また、次の読書でお会いしましょう。
メモ
留学記となっているのは、勾留がいつまで続くか分からない中で、拘束を留学と捉えて獄中のメンバーからロシア語を勉強し始めます。そのためです。
- 獄中のメンバーには、お尻にドラえもんのタトゥーが入ったモロッコからの留学生がいた。彼は喧嘩で国外追放になります。
- また、ウクライナから兵役を逃れるために、祖国を捨てて隣国に不法入国したウクライナ人がいた。
- いい人だけでなく嫌なやつもいて、ことあるごとに難癖を付けられ私物を横取りされたりした。
- 最終的に著者は、トランプ大統領の働きかけによってルカシェンコ大統領から恩赦を得て開放される。他のメンバーと一緒にリトアニアのアメリカ大使館に送られるのですが、そのときアメリカの外交官は「あなたたち14人はファーストグループに過ぎない。ゆくゆくはベラルーシ国内で不当に拘束されている人を全て解放する」と言ったようです。著者は性的マイノリティなので、トランプ大統領のことを好意的に捉えていなかったのですが、アメリカの力を思い知ったようでした。
要領の良さを捨て、器用な立ち回りを捨て、合理的な選択を捨て、自分という存在を強烈にドライブする「衝動」に取り憑かれたいと思う人は少なくないのではないでしょうか。
著者は、このベラルーシでの一件以前から鉄道や外国に対する強い興味・関心から、親に嘘をついてお金を借りたり、渡航先を偽って危険な国に渡ったり、その渡航先で自動車事故を起こしたり、クレカの決済が滞ったりと様々な問題を引き起こしてきました。



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