[本の小並感 169]米国式投資の技法 twitterフォロワー25万人の切れば血が出る生情報と投資哲学

読書

世界観を変える踏み上げ太郎のブログ

投資は一切しなかったのだが、何かのきっかけで「ほったらかし投資術」を読んで始めた。この本は、投資に興味はないし時間も割けないけど、預金に寝かしておくだけでは老後不安という様な層に文字通り手取り足取り教えてくれる様な本である(口座は手数料の安いネット証券に開きましょうね、だけでなく、具体的にSBIか楽天選んどけば間違いないよ、まで教えてくれる。)。

それとは全く別として、この本の著者である広瀬さんのことは、田端さんが広瀬さんのブログを下記の様にベタ褒めしていて存在は知っていた。

私も損が出ているが、踏み上げ師匠(注:広瀬さんのこと)のブログには、本当に感謝している。含み損以上に価値があるものを、踏み上げ師匠のブログから学べたからだ。断片的な知識を得られるブログは数多いが、世の中の見え方、世界観まで変えてくれるブログというのは、そうそうない。踏み上げ師匠のブログは、私にとってそういうブログだった。
出典:ドバイのバブル崩壊に便乗して儲けるにはどうする?

今でこそ広瀬さんはtwitterのフォロワー25万人、Youtubeのチャンネル登録者8.75万人の有名人で、特にYoutubeには3、4時間の長時間のライブに数千人の株クラどもが集まって、それぞれの考える銘柄についての意見を求めている。

私自身も広瀬さんを知る前は「証券営業?情弱騙して押し売りするんでしょ?」くらいに考えていたが、機関投資家向けの営業という仕事が、湧き出る様な広い知識と鋭く深いインサイトで相手を圧倒する非常に高度な仕事だと見直した。

この本は、そんな広瀬さんの本である。

投資興味ない人向けポイント

私はもろ「ほったらかし投資術」のターゲット層なので、インデックスファンドに長期でブッ込むスタイルである(グロースで個別株を取引することは、遊び程度で少しあるくらい。)。その観点から、この本で気になった点を三つメモしておく。

  1. 長期投資には厳しい審美眼が必要
  2. よい決算とは何か
  3. 投機が流動性を供給する

長期投資には厳しい審美眼が必要

インデックス投資をしていると、何となく長期でインデックスファンドにぶっ込んどけばいいんだろ?という意識になる。しかし、Buy&Holdする場合も、ろくにキャッシュを生み出さない穀潰しみたいな会社の株を持ち続けるのは単にジリ貧になるだけだ。そんな「結婚できるなら誰でもいい」みたいな思考停止スタイルは「アホールド」である、という。

バフェットも、長期投資なら何でもいい訳ではなく、優良な投資先を長期でもてと言っているのだ。逆にこの優良な投資先を選別する能力がなければ、長期投資のメリットを享受できない。

しかし、長期投資における優良と不良とを区別するのは容易ではない。過小評価されている優良な会社と、万年安い株価で放置されている会社とを見抜くためには、財務諸表を縦横に読み解けるリテラシーが必要であり、他人が売るときに自分は買うのだから、自分の分析が正しいと信じる信念も必要である。短期は負ける・長期は勝てるという簡単な話ではない。

よい決算とは何か

広瀬さんのYoutubeライブでは、決算決算決算決算と、とにかく決算を重視する。そして、よい決算の条件を次の三つに上げている。

  • EPSがコンセンサス予想を上回る
  • 売上高がコンセンサス予想を上回る
  • ガイダンスがコンセンサス予想を上回る

株を買う前に調査はしても買った後は放置してしまう。その企業の業績をフォローしない、というのは「凍死家」である。買った時が始まりであり、四半期ごとの決算を常にチェックしろという。

これはグロース投資の話かと思っていたが、バリュー投資でも「これくらいはやれ」ということだろう。これに加えて長期投資では、1株当たり純資産(BPS)が長期における企業価値の成長を測る目安として挙げている(バリュー投資は長期投資とは限らない?)。インデックス投資ではそういうわけにもいかないだろう。

投機が流動性を供給する

原始的な先渡取引は、例えば豊作で価格が暴落するなどの事態が発生すると、履行相手が約束守らないという事態が発生した。これを防ぐために証拠金制度などが導入されたが、証拠金没収の方が損害が小さければやはり約束を履行しない奴が現れる。これは取引のプレーヤーが1対1と限られているという構造的な問題である。

そこで、取引単位の標準化と、品質の標準化が行われる。

これによって、取引単位を個別の農家に関わらず細かく調整可能になり、あるコントラクトから別のコントラクトへと乗り換えても一定の品質で入手が可能になった(fungibleというらしい。)。この変化は、つまり先渡取引から先物取引への進化は、「状況が悪くなったら売ればいい」という出口戦略を提供し、それによって市場参加者が増え、ヘッジ側(例えば農家)の反対取引を提供する参加者が増えるというよいフィードバックループを形成した。

このヘッジ側に反対取引を提供するプレーヤーをスペキュレーターといい、先物市場の参加者の97 %がこのスペキュレーターであるという。speculateには、推測するなどの意味の他に、投機するという意味がある。一般に投機という言葉はネガティブな印象を与えるが、市場に流動性を提供する重要なプレーヤーなのだ。だから、投資と投機は区別しない。

切れば血が出る生情報と、そこから導かれる投資哲学

この本は、前出の「ほったらかし投資術」の様に手取り足取り教えてくれるお子様向けの本ではない。一応基礎知識も解説してくれているが、整然と体系立てて書いてあるわけではない(例えば、決算情報のWebでの調べ方は異様に細かく説明してある一方で、よい決算の条件がなぜEPSや売上高なのか、その他の指標ではないのか、という説明はあまりない。)。

それよりも、この本の魅力は、広瀬さん自身のアメリカでの証券会社勤務から来る「キレが血が出る生情報」と、そこから導かられる投資哲学だろう。なるべくきれいにお化粧させたいという幹事証券会社の思惑や、儲けたい・乗り遅れちゃダメだという欲に溺れた心理で購入した株は損をする、など耳の痛い話がある。整理されてはいないが、そう言った箇所は筆に勢いを感じる。

ただ、そもそもそう言った話は断片的にSNSで知っていたので、整理された情報を求めていた、という意味では、期待していた内容とは少し違った。

売ろうと思うが、後々「広瀬さんどう言っていたかな?」という時のために、しばらくとっておきたい気もする。ちょっと迷う(例えば、上記に書いた以外にもメモしておきたい点はある。バリュー投資の投資尺度としてPBR、PER、株価対CFを上げているし、グロース株はEPS成長率、レラティブストレングス、決算サプライズを上げている。)。

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