[本の小並感 162]ルワンダ中央銀行総裁日記 What do you want to be remembered for? 彼は「憶えられた」

読書

私の中のルワンダ

もう少し前だが、#Amazonのアカウントで最古の注文履歴晒すというタグが回ってきたので調べてみると、Shake hands with the Devilという洋書だった。

ツチとフツ。二つの民族の民族紛争で50万人とも100万人とも言われる人々が虐殺された。この本は、そのルワンダの紛争調停に派遣された国連軍の指揮官が書いた本であり、The failure of humanity in Rwandaという副題のとおり、思うような成果を得られないまま撤退することになる。

私のにとってのルワンダは、このイメージが強いのだが、その20年も前に中央銀行の総裁として日本人が派遣されていたのは初めて知った。

自立できない(させない)構造

このほかでは、松本仁一さんの「アフリカを食べる」は繰り返し読んだが、ルワンダに限らず植民地から独立したアフリカの国が経済的に独立できないのは不思議なことの一つだった。松本さんは一つには「指導者の失政である」と批判を覚悟で述べているが、この本をみると旧宗主国が独立後も公に民に隠然たる影響力を持ち続け、悪く言えばその国の発展を阻んでいることが現場の実態として理解できる。

ところが、歳入面の方を調べてもっと驚いた。ルワンダ農民が人頭税、家畜税で租税収入の78 %を負担しているのに対し、商業、鉱工業を独占している外国人会社は20 %しか負担していない。(中略)これでは全くルワンダ国民に過大な税負担を強い、富も所得も格段に違う外国人優遇の税制ではないか。そして税制で優遇された外国人の所得は外国に送金され、ルワンダの経済発展に再投資されることはないのである。

税制に限らず、外貨割当制度による輸入の独占や競争の制限、二重為替相場制度など、一部の事業者に有利な制度になっているのである。

しかし、なぜそんな制度を許しているのか。政治家は独立した時に選ばれたルワンダ人であり、不公平な税制は是正すれば良いのではないか。残念ながらそれも容易ではないのである。

教育問題

ルワンダの悲劇の一つは、独立の準備が整わないまま、突然独立を与えられてしまったことが一つの原因であると書いてある。このため、官僚や政治家といった要職にある人々も近代的な国家の運営、企業の運営のスキルがない。

外国人に対して最もコンプレックスのなさそうなチマチ蔵相でさえ、私の話はよく聞き、熱心にメモをとるが、自分の意見はなかなか言わない。たまに言って結論だけで理由は言わない。(中略)話が少し難しくなると、それは外国人技術顧問に聞いてくれという。

自分の詳しくない分野で話ができない、というのは誰でもあるだろう。私も床屋や服を買うのが苦手である。

管理や検査においても、正面から議論できないルワンダ人検査員は深く追求せず、結果的に虚偽記載や脱税などが横行することになる。それが国家の運営レベルでも発生しており、「だから、我々外国人がいなきゃダメなのさ」というのが外国人の言い分であり、その彼らが自分たちが有利に設計したのは、上記の税制や為替制度だけではない。

食糧不足問題

アフリカの飢餓が問題だった頃、カカオやコーヒーなどの嗜好品を栽培し、市場価格が下落し、外貨収入が途絶え、食糧が輸入できない。などの話を聞いた。しかし、そもそもなぜそんな作物を栽培するのか。国民の食料を生産し、その余剰分を外貨獲得のための農産物に割り当てるなら分かるが、そうではないのである。これも外国人の悲劇だろう。

「私の外国人顧問はルジジ地方に綿花を植えることを進言しているのですが、本当に困っています。米を植えれば農民は1ha当たり7,500スイスフランの現金収入を得られるのですが、綿花を植えれば3,000スイスフランにもならないのです。(中略)外貨で苦労している総裁には悪いが、私としてはどうも農民にそんな犠牲を強いることはできませんし、また私が言っても農民が承知しませんが、総裁どんなものでしょう?」

これは農林相が中銀総裁の著者に相談している内容である。この話も最初は、綿花を植える立派な計画を農林相が邪魔している、という文脈で著者の耳に伝わるのである。それ以外にも植民地時代にはベルギーは、コーヒーの栽培を一定数強制する政策をとったりしている。コーヒーについては、栽培には適しているが、内陸国であるルワンダは輸送費が高くつき国際的な競争力は高くないのである。

戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さである

著者は1965年から1971年までの6年間をルワンダ中央銀行の総裁として勤める。著者が離任した後も順調に経済発展を続け、アフリカの優等生とまで称されるが、前述の1994年の紛争によって壊滅してしまう。

しかし、それでも彼の残した功績が消えることはない。「戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さである」。著者はこの信念でルワンダ国民を信じ、国家の基盤を築いたと言っていいだろう。彼は、ドラッカーの言葉のように「憶えられた」と思う。うらやましい。

When I was thirteen, I had an inspiring teacher of religion, who one day went right through the class of boys asking each one, ” What do you want to be remembered for?” None of us, of course, could give an answer. So, he chuckled and said, ” I didn’t expect you to be able to answer it. But if you still can’t answer by the time you’re fifty, you will have wasted your life”

 

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