『ある行旅死亡人の物語』人間は二度死ぬ。一度目は自分が死んだとき。二度目は

読書

みなさん、こんにちは。

今日は『ある行旅死亡人の物語』を紹介します。行旅死亡人とは、死亡し引き取り手が存在しない死者のことです。通常、自治体によって荼毘に付され、官報で遺骨の引き取り人を待つ処置がとられます。この本は、2020年4月に兵庫県尼崎市のアパートで亡くなった女性の身元を共同通信の記者である著者たちが調査する形で進んでいきます。

この女性はかなり特徴がありました。

  1. 3,400万円の現金を自室の金庫に保管していた
  2. 銀行口座はもっていなかった
  3. 住民票が抹消されている
  4. 健康保険に加入していない
  5. 賃貸借契約書は他人名義
  6. 右手の指が全て欠損している
  7. 「沖宗」という印鑑をもっている

これだけでもかなり特殊な印象を受けますが、それ以外にも身元を証明するような書類などが一切残っておらず、まるで自分の存在を社会から意図的に消して生きてきたような印象を受けます。そのため著者たちは北朝鮮のスパイ説まで含めて、警察や財産の管理人となった弁護士と調査を進めていきます。

ここからはネタバレです。

この女性の身元を著者たちは突き止めます。「沖宗」という珍しい苗字を頼りに広島で聞き込みを続け、ある人から自分の伯母である、つまり亡くなった女性にとっての甥を発見するんですね。そこを手掛かりに、小学校の旧友などを訪ね、この女性がどんな少女時代を送ってきたのかなどを突き止めることに成功します。右手の指の欠損も工場での事故だったことが判明します。

ただ、肝心なことは分からないんですよね。なぜ銀行口座を持たず3,400万円もの現金を自室の金庫に保管していたのか。なぜ住民票を抹消したのか。なぜ健康保険に加入していなかったのか。なぜ、人目を避けるようにひっそりと暮らし亡くなったのか。そういったことは結局わからず仕舞いでした。

その意味で肩透かしをくらった印象でした。

ただ、よく「人間は二度死ぬ。一回目は自分が死んだとき。二回目は自分を知っている人が死んだとき」といいますよね。遺留品からその人のことを推し量るのは困難ですし、そもそも興味を持ってくれる人も稀でしょうから、今の怠惰な生き方を省みる機会にはなりました。また、特に前半の身元を割り出そうとする調査過程はミステリーのようで、するするページが進みましたので、そういう楽しみ方もアリだと思いました。

まとめると

  1. 感じな部分は不明のまま
  2. ミステリー的な面白さはある
  3. 自分の今の生き方を省みる機会になる

のような感じです。

最期に、あるドキュメンタリーをご紹介したいと思います。ETV特集「空蝉の家」です。

神奈川にある住宅街の一軒家。ゴミ屋敷と化していたこの家で一人の男性が遺体で発見された。男性は30年以上にわたってひきこもっていた伸一さん(享年56)だった。誰もいなくなった家には、伸一さんの亡き父親が長年つけていた日記も残されていた。つづられていたのはどこにでもある家族の日々。しかし、ある時から父親は伸一さんを「まるで空蝉のようだ」と記すようになる。家族に何があったのか。この家の記憶をたどる。

私が知る中でも最も暗いドキュメンタリーの一つですね。単品220円という格安で購入できます。『ある行旅死亡人の物語』に興味のある方には非常に刺さる内容だと思いますので、ぜひご覧になってください。

本日は以上です。また次の読書でお会いしましょう。

 

 

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