生産性向上は、異端なのか
彼の著作は何冊か読んでいる。
菅首相の成長戦略会議のメンバーに選ばれたときは、「首相はアトキンソン信者なのか?」と物議を醸したが、個人的には著者の主張に違和感はほとんどない。この本の内容も極めて常識的だと思う。
と言うか、日本が今後も豊さを享受し続けようと思えば、もっと豊かになろうと思えば、生産性を上げるという選択肢に何の異議があるだろうか(GDPで測れない豊かさもある、という指摘を否定するものではない。)。
どうやって生産性を上げるのか
問題はその方法である。
この本で提案されている生産性向上の方法は二つある。一つは観光で、もう一つは女性なわけだが、彼の2019年の著書では、その切り札は「最低賃金の値上げ」である。
通常、受給が一致する以上の賃金を義務付けると、労働力の需要が不足し失業者が増える。だから、急進的な左派以外は採用しないが、この最低賃金は国が企業に求める最低の「生産性」なのだ。
この生産性ラインをも達成できないような体たらくな企業は市場から撤退しなければならない。竹中平蔵などが言う「良い企業とは、利益を出している企業」と言うのはそう言う意味だ。
2017年に書かれたこの本の処方箋(観光と女性)よりも、2019年のこちらの方が彼の結論に近いだろうし説得力もある。その意味で、この本を読む意味はあまりなかった気がする。
参考文献:最低賃金の引き上げで中小企業を減らせ
日本の産業構造
生産性が低いと言うとよく聞くのが「製造業よりサービス業の生産性が低い」と言う議論だが、下記の通り業種によって様々である。
資料にもある通り、雇用の多い宿泊、飲食サービス業などは確かに低いが、これは投入する労働量が大きくならざるを得ないためだろう。
サービスの質を低下させれば、生産性は向上する
生産性は、下記の式なので、資本の投入量を減らせば、つまり分母を小さくすれば生産性は向上する。
しかし、倒産増えました、失業が増えました、サービスの質が低下しました、はい生産性向上!と言われても、こんなはずじゃなかった、だろう。郵便の再配達がなくなる。それだけだ。
だから、サービスの質は落とさずに効率化する、又は新たな付加価値を創出することが必要だ。下記の資料にもある通りで、デービッド・アトキンソンの言うように観光にはその余地が大きいように思う。
製造業の生産性向上(問われる、新たな価値の創出)
では、製造業で働く私はどうすれば良いのか。新しい価値は何か。
直接的にはラインの自動化による資本投入量の削減・合理化があるわけだが、それは分母の削減であり、新たな価値を創出できていない。
個人的には、新たな価値の創出ではなく、既存のシステムの非合理的な部分、と言うより静脈産業と言えばいいのか?そちらにどうしても目がいってしまう性格なので悩ましい。
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