[本の小並感 158]サカナとヤクザ 密漁前提のエコシステムが生んだ怪物は、暴走し、そして自らも喰らい尽くす

読書

どのくらい密猟されているのか

アワビは、だいたい半分が密猟らしい。さらっと書いたが、半分が密猟とはすごい。

ナマコも、だいたい半分が密猟らしい。シラスウナギは2/3とwikipediaで推測されている。

とにかく、正確に全体像を把握することが難しいらしい。検挙数が水産庁のWebに掲載されているが、これは検挙数なので、検挙されない密漁が実際どの程度の量か分からない。

密漁前提のエコシステム

しかし、半分が密漁という状況では、それを「ないもの」として見なすことはできない。

自身の幸福を追求する個々の経済主体は、それが褒められたことではないと知りつつも、密漁前提で活動せざるを得ない。正直者がバカを見るなら、少しグレーな領域に踏み込むだろう。「知らなかった」と言えば済むのだから。

事実、水産庁、大手水産会社、漁師、漁業組合、市場関係者の誰もが自分たちの腹に寄生虫が蠢いているのを自覚している。(中略)「枠など1tあればいい」。かつて日本の漁業を支えていた北洋サケ・マス船団の関係者は取材でそう言い放った。

暴走し、自身をも喰らい尽くす怪物

結果として、密漁は巨大な既得権に成長し、もはや誰にも制御できない怪物として暴走している。

「あまりにも地雷が多すぎて下手に突けない。」東京海洋大学の勝川俊雄准教授は言う。

実際漁業をちょっと取材するだけで、密漁や産地偽装などの諸問題がごろごろ出てくる。叩けば埃どころではない。こびりついた垢に近い。(中略)

「うっかり手を突っ込めば、日に当ててはいけないものを引っ張り出してしまうかも知れない。そこで体を張ってたら、体がいくらあっても足りない。水産庁が手を突っ込みたくない気持ちはすごく分かります。」(同)

そして、海は痩せ、漁獲量は右肩下がりで減り続ける。タコが自分の足を食べるように追い詰められている。

「わたしは イオンモール。 すべての商店街を消し去り そして わたしも消えよう」

イオンは、新しいものによって古いものが代替されることで価値が想像される健全な意味での新陳代謝だ。

しかし、海は違う。

密漁する水産資源が全て枯渇するまで現状を続ければ、密漁もなくなり、既得権もなくなり、私たちが食べる刺身は全て海外からの輸入になり、その頃にはそれを買うだけの外貨も無くなっているかも知れない。

んで

すごく面白いような気がするが、読むのにかなり時間がかかった。なぜだろう。この感想もキーボードが進まなかった。売る。

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