『デデデ・・・』が終わったのを知って、全巻買って読んでみた。
「怠惰な夏休み」の行き着く先
浅野いにおは、非日常を描くことで日常を浮き上がらせるのがうまい。おやすみプンプンも愛子という非日常が、なんでもない退屈な日常の意味を再発見させる。
しかしデデデでは、侵略者という非日常が、咀嚼され、吸収され、すぐに日常に取り込まれ、戦争ゲームに明け暮れる門出と凰蘭は、小さな違和感を覚えつつ「怠惰な夏休み」を過ごす。
8.32以降の急展開は、浅野いにおが、このような世界があるところで破綻し、それを避ける方法はなく、並行世界に希望を託すしかなかったことを示している。
デベ子からの卒業
最後の世界では、侵略者は存在せず、S.E.S社の兵器である歩仁は、友達としてのFUJINとなり、門出も凰蘭も立派な社会人として成長し自立している。二人とも、デベ子のような、怠惰で、浅ましく、他力本願な「どうしようもない存在」ではもはやない。
浅野いにおは、そのような世界をこそ、あるべき未来として描いている。それは、個人は健やかに成長し、社会は成熟する、侵略者が来る前に門出が退屈していた世界そのものだった。
イソベやんの再発明
侵略者の科学力は、結果的に世界を破滅させたが、時空の向こうからおんたんと門出は、それとは違う世界を生きる2人にイソベやんを贈る。
侵略者のいない世界を生きる我々は、成長し成熟し、そしてそれと同時にイソベやんを再発明しなければならない。デベ子のような「どうしようもない存在」の欲望こそが、未来を想像し、創造し、侵略者のそれとは異なる未来の超科学を生み出す源泉なのだから。
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