5月25日(水) 抗がん剤治療ができない!?
5月25日(水)は、母が抗がん剤治療のために入院した。
しかし、すぐ父親から電話がかかってくる。なんでも先生が明日家族揃って話をしたいというのだ。その時のことはあまり覚えていないが、土日に帰省した時、意外に元気そうだった印象もあり、職場にいたがさすがにショックで電話スペースに移動して泣いた。
その後のラインで、すぐに命がどうこうというものではなく、治療法に関することであることを知りやや安心するが、抗がん剤治療ができないかも知れないと知らされる。どうも肝臓の数値が悪いらしい。
でも、抗がん剤治療ができないとか、そんなことある?
5月26日(木) 抗がん剤か、緩和ケアか
午後半休を取り、姉と有楽町駅で合流し病院へ。
電車の中で、土日に本屋で買ったガン治療の本を読む。手術による切除ができないというのは聞いていたが、抗がん剤治療以外にも、放射線治療だとか、重粒子線治療だとか、PARP分子標的薬とか色々ある。それなのに、抗がん剤ができないと緩和ケアだという…いつも帰省はお土産とか買って楽しい帰省だが、こんなに楽しくない電車は初めてだった。
夕方、病院に着くと重苦しい雰囲気である。病棟は建て替えられていて綺麗だが、無味無臭の無機質で冷たさを感じる。待合室で待っていると、看護師さんと母が来て一緒に会議室のような場所に入る。母は少し小さくなっているように感じた。
先生の話は、だいたいこんなか感じだった。
- 膵臓癌であり、肝臓に転移している。しかも結構転移している。
- 肝臓のT-Bil(総ビリルビン、ティービル)という値が高い。これが高いと、抗がん剤の効果が得られず、副作用の方が大きくなってしまい、逆効果になってしまう危険がある。副作用で肝不全になってしまう。
- T-Bilが3を超えると、抗がん剤治療はできない(ガイドラインがそうしている)。
- 抗がん剤は、使うならゲムシタビンを使う。肝臓の数値によって80 %に薄めることもできる。
- その他の治療法、ステント治療やバイパス治療、放射線治療、重粒子線治療、PARP阻害薬は、既に広範囲に転移していたりするので使えない。フォルフィリノックス(FOLFIRINOX)も、炎症がひどく体力がないので使えない。
- 提案は二つある。1つはゲムシタビン80%でやってみる。もう一つは緩和ケアにする。予後は、後者の場合で1、2ヶ月、前者の場合でも数ヶ月。抗がん剤治療がうまく行っても年単位で予後が伸びることはない。
父も母も余命を聞いていなかった。心の準備ができていなかったので、意図的に聞かなかったのだが、先生の問いに母は不安そうに頷いた。父が母の手を握った。
先生は若いが落ち着いた丁寧な語り口の、菩薩のような方だった。緩和ケアか抗がん剤か。来週になると肝臓の数値がさらに悪化し、3を超えてしまうかもしれない。抗がん剤治療は、明日しかチャンスはないかもしれない。
結局、ゲムシタビン80 %で抗がん剤を試してみることにした。しかしそれも、明日の血液検査の結果次第ではできなくなるかもしれないのだ。
参考:膵がんの化学療法(ガン研有明病院)
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