[本の小並感 140]エネルギー産業の2050年 電気代という概念は消滅し、UXサービスが出現する

読書

DeNAの松尾さん

ちょっと仕事の本。

twitterで松尾さんというDeNAのエネルギー事業推進部の方がいて、この人のツイート経由でU3 Innovationsという会社を知った。下記のブログはよく分からないが、この人がその道のエキスパートであるということはよくわかる。この本は、そのU3 innovationの本(松尾さんは直接関係ないみたいだけど)。

この本では下記の5つのDを中心に2050年のエネルギー産業、特に小売発電がどのようなビジネスに変貌してくのかを展望する。

  1. Depopulation(人口減少)
  2. Decarbonization(脱炭素化)
  3. Decentralization(分散化)
  4. Deregulation(自由化)
  5. Digitalization(デジタル化)

小売の変化

モノからコトへ、製品からサービスへ。今時バズワードだが、それが電力の小売というビジネスにどう影響するのか。

”では、こうしたビジネスパフォーマンスや顧客体験を軸に市場が再定義されたとき、電力はどうなるのか。デジタルで、あるいは消費者マインドの変化で世の中のあり方が変わったとき、電力はどんな新たな市場に再定義されるのか”、”直接的な顧客体験を提供することができないエネルギー業界はどう動くべきか。”

センサー技術の向上で従来の特定計量器に頼らずに電力取引に耐える正確な計量が可能になり、ブロックチェーンによるマイクロ決済が実装されれば、現在の家庭単位の電力契約は消滅する。実質機器ごとに消費電力を測定することが可能になり、家庭は「電気を買う」のではなく「電気を利用したサービス」を購入することになる。

洗濯機なら清潔な衣服が綺麗に収納されているサービスを、エアコンなら快適な空調環境がいつでも実現されるサービスを、電気に対して課金するのではなく、そこから得られる体験自体に課金することが可能になる。食洗機も冷蔵庫もEVもそうなって行くだろう。

結果として、現在の電気の小売という業種は最終的に消滅し、筆者らがUXコーディネーターと呼ぶサービス事業へとそのビジネスモデルを変えていくだろうと予想する。そこでは電気代という概念も消失する。現在の電力会社の小売部門は、このような形への変化を要求されている。

発電の変化

この本では発電の価値をkW価値、kWh価値、ΔkW価値という3つに分解し、再生可能エネルギーが主導する発電分野においても既存の火力発電などの価値=kW価値+ΔkW価値は引き続き重要であるとする。現在は電力会社という形でごった煮になっているが、その収益の確保の一つが冒頭の容量市場になる。この辺は、電力の関係者であれば異論はないだろう。その意味で、制度設計は重要だが、小売ほどの本質的は変化はないように思われる。

ただし、2050年に80%の削減(基準年は決められていない)を達成するためには、蓄電システムを含む太陽光を中心とした再生可能エネルギーの増加のほか、非電力部門の大幅な電化が必要としている。結果として、石油・運輸部門も含め、上記の小売で見たようなサービス化のビジネスに参入し、異業種間の企業が凌ぎを削ることになる。それは自動車メーカなどだ。

DER+Sが増えるが、電化によって総需要は増え、BERの重要性も続く

んで

電力が自由化されて安くなったとして、電気の使用量が増えるだろうか?そうはならない(需要の価格弾力性が低い、と言えばいいのだろうか。)。その意味で電力自由化の効果を疑問視 or 効果が少ないと見る向きもある。

しかし、3.11以降の一連の電力システム改革の結果として、上記のようなデジタル化による価値のサービス化を通して消費者・需要家の効用は向上する。

そのとき私はどうすればいいのか。新しいような、今まで色々なところで言われているような。モヤモヤした気分は残るが考える機会にはなった。

コメント

  1. […] 職場の偉い人が交代になり面談ついでに本を読んで感想を書いてこい、ということになった。その課題図書がこれである。先日読んだエネルギー産業の2050年と一部著者が被る(アクセンチュア伊藤氏、東電HD戸田氏など)が、まぁ読む本もなかったしちょうどいい。 […]

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