[本の小並感 171]モビリティ2.0 少子高齢化は何が問題なのか。新たな価値が生まれない死を待つ老人国家

読書

約1ヶ月ぶりに本を読んだ。大体何かしらツンドクされているが、特に読みたい本がなかったのだ。

この人の本だから、と言う人で選ぶことはあまりないが、この人のモビリティ・エコノミクスが、結構良かったので買ってみた。時系列では、こちらの方が古く2018年だ。

エコシステムが変わるとき(おさらい)

そのせいもあってか、やや古い印象を受ける。CASEなどと言うのは、もう(それを正しく認識し、対処に動けているかは別として知識としては)常識であり、「自動車の死」を受け入れよう、と言う副題も「だよね」と言う感じである。

一応整理しておくと、IoTやブロックチェーンなどの技術によって、CASEが可能になると、自動車というハードの価値は低下する。下記のようにCASEの反対概念を並べてみると、既存の自動車産業の価値が、ハード中心に回ることが理解できる気がする(英語は適当)。

  • Connected ⇆ Standalone(独立)
  • Autonomous ⇆ Manual operation(手動)
  • Sharing ⇆ Possession(所有)
  • Electric ⇆ Combustion engine(内燃機関)

現在は、この古いSMPCからCASEという全く新しいエコシステムへの移行期であり、それぞれの分野が密接に関連しながら覇を競っている。そしてCASEにおける価値の中心はデータである、と言う点もMaaSが苦戦する収益化の改善手段としてモビリティ・エコノミクスで著者が提示した点だ(儲かりMaaS、と言うネーミングはキャッチーなものとは思えないが)。

その意味で、新しい発見があるかというと、モビリティ・エコノミクスを読んでいるなら、そうでもない、という印象だった。おさらいにはいいかも知れない。

少子化は何が問題なのか(死を待つだけの老人国家)

本題とは外れるが、CASEに移行する重要な環境変化に世代の変化を上げている。日本でミレニアル世代と言うとピンとこないが、世界全体では彼らが最大の人口集団(コホート)を占めると言う(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)。

そして、CASE時代の技術を持つ企業のリーダーは、このミレニアル世代であり(実際経営者が若い)、自動車を含むUXは、このデジタルネーティブの価値を反映するものになる。

何かの機会で、「金を払ってでも若年層と飲め。企業が最も知りたい情報、未来の事業環境、未来における価値は彼らの中にあるのだから」と言う話があるが、日本ではこのミレニアル世代は人口構成比でベビーブーマー(1946〜64、27%)、ジェネレーションX(1965〜79、22%)に次ぐ3番目(21%)である。

そこでは、新たな価値は経済的・社会的に受け入れられない。

これまで少子化が問題だ!と言うことは大きく語られるが、「なぜ少子化が問題なのか」は意外なほど語られない。仮に社会保障が持たない、と言うことであれば、社会保障という制度自身を変えればいいのだし、GDPよりも一人当たりGDPを高く維持して豊かさを実現する小国はあるのだから(外交、防衛的なデメリットはありそう)。

しかし、この本で指摘された点、新たな価値は経済的・社会的に受け入れられない。というのは、新たな価値が受け入れられず、新たな市場が育たず、結果として新たな製品もサービスもない、本質的に縮小均衡に向かう老人国家であり、未来がない感がすごくある。

極論だが、18歳未満でも親が1票持てるとか、80歳以上は投票権を失うとか、そんな制度設計もありではないか。下記のツイートで言えば、「人を残す」にはどうすればいいのか(数ではなく質的な意味で)。ちょっと危機感を覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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