スプラトゥーン引退した。仏もキレるイライラ感とリアルを破綻させる中毒性。スプラ3が変わらぬ鮮やかなドス黒いインクでありますように

ゲーム

スプラトゥーンを引退した。

2018年の8月にSwitchごと購入し2021年の5月までの3年弱、ほとんどスプラだけをやり続け、積み上げたプレイ時間は2,100時間。私もゲームはそれなりにやってきたが、掛け値なしに神ゲーと言える(同時にクソゲーでもある。)。

ジャンキーを量産しリアルを破綻させる異様な中毒性

スプラ界隈で一時期話題になったAmazonのレビューは、今でも下記である。

優しかった夫が人が変わったようにイライラし暴言を吐く。信じられない人もいるかも知れないが、これはスプラ経験者なら誰も疑わないだろう。特に負けが込んできた時のイライラ感は、かつてこんなにもイライラしたことがあるだろうかと思わせる。

「仏でもキレる」イライラ感。しかしそれでも辞められない異常な中毒性がこのゲームにはある。

いいね数3097のAmazonのトップレビュー

周囲の音が消え、尿意も消し飛ぶ没入感

スプラは1試合5分間である。他のFPS・TPSに比べれば短いだろうが、その分始まった瞬間から勝つためにやるべきことが大量に、同時多発的に発生する特別濃厚な5分になる(だから、真剣に潜ると1戦で異様に消耗する)。

敵・味方の武器編成、射程、キル・塗り、前衛中衛後衛の役割分担、サブスペ、残機、位置、スペシャルの溜まり具合など、ありとあらゆる環境要素が高速で移り変わり、それらを認識し判断し行動し続けなければならない。

その間、息をつく暇はなく、周囲の雑音の一切が消え去り、尿意も便意も綺麗に消し飛ぶ。そして5分間が終わった直後に猛烈な尿意に襲われながら「続ける」のボタンを押すのである…

なぜこんなに面白いのか?「遊び」とは何かを哲学レベルで理解する任天堂の底力

スプラはなぜこんなに面白いのか?というシンプルな質問の答えは簡単ではないだろう。よく言われるのは、イカ移動やイカ潜伏でこれがスプラを単なるシューティングゲームの枠に収まらないものに仕上げているが、その基礎となる「インクの塗り合い」というゲームの基本コンセプトが極めて優れていることは疑いようもないだろう。10年以上もゲーム専用ハードから遠ざかっていた私が、スプラはやりたいと感じたのも、このコンセプト故である。

カイヨワは遊びを競争、運や賭け、真似模倣、スリルという4つの類型に分類したらしいが、スプラはこの4つの要素を「インクの塗り合い」という基本コンセプトの上に、絶妙なバランスで配合し構築されている。

ファミコンを開発した山内溥は、デジタルのデの字も知らないアナログ人間だったが、「遊び」とは何かを骨の髄まで理解していたという。スプラはそんな山内の人間の遊びに対する洞察が任天堂の中で脈々と受け継がれ、さらに深く広く進化していることを伺わせ、任天堂の懐の深さ、底力を見せつけてくる。

そして廃人になる…

おっさんが上手くなるために

スプラは攻略の動画も大量にアップされているが、スプラの要素を体系立って整理しようと思えば、認知・判断・行動の3要素に大別できると思う。

認知・判断・行動という3要素を高速で回す

  • 認知:カウント、残り時間、敵味方の数・位置、スペシャルの溜まり具合など、判断を下すための基礎情報の収集。特に敵の位置は重要で、上級者ほどマップや音による敵位置の把握に長けている。基本にして究極。全てを完璧に把握することはできないので、予測が重要になる。
  • 判断:認知で得られた情報を基に局面を判断し、攻めるのか・守るのか、塗るのか・潜伏かなどの次の行動を決定する。例えば、今は打開の局面だが味方が2枚落ちている(認知)から、復帰を待つ間にクリアリングしてスペシャルを合わせよう(判断)、など。認知には正解があるが、判断には完璧な正解はない。熱くならないメンタルも重要。
  • 行動:判断を実行するための行動。いわゆるキャラコンで、代表的なのはエイムだが、エイムに限れば予測が非常に重要。解説動画も多いが、この3要素の中では優先度は低い。

ゲームスピードの速いスプラは、「味方は4人生きてて、敵は3人生で、バレルは右で、ラピは左で、ザップはえーっと」などとやっていると、もうその時には状況が変わってしまってる。

このゲームスピードの速さが、おっさんを苦しめる大きな要因だが、判断の冷静さとメンタルで勝負ではなかろうか。このピラミッドに基づく方法論をXPで証明できなかったのは少々心残りではある。

スプラ3への期待と不安

熟成されたゲームバランス。これ以上何を調整するのか

完璧なゲームが存在しないように、スプラもまた改善点は存在する。

しかし、2015年のスプラ1の発売から数えて6年間(スプラ2の開発は1のリリース当初から始まっていた)、熟成に熟成を重ねたゲームバランスは、完成の域にあり「アップデートが果たして良い結果をもたらすのか?」という疑問が浮かぶ。

具体的な話をしよう。例えば、よく言われるのは編成差である。後衛が偏ったり、ルールに不利(と言われる)武器が偏ったりといった現象だが、遊びの定義で書いたようにギャンブル要素はゲームの重要な要素なのだ。他の要素が極めて実力を正直に反映するスプラ において、マッチングアルゴリズムは、重要なギャンブル要素を提供しているように感じる。

しかし、ここではあえて幾つかスプラ3に期待する点を考えてみたい。

商標登録されたスプラ3のロゴ

20歳以上でXP3000はいないという事実(ゲームスピード問題)

一つはゲームスピードである。スプラを初めて見た人は「忙しないゲーム」だと感じるだろう。

このゲームスピードの速さが中学生・高校生くらいの若年層がトップを独占する要因になっている。おっさんにはそんな高速に処理できないので、例えばえとなさんは、GG Boysというトップチームのメンバーだが、彼でもXP3000は到達できていない。

2021/8に2990まで行ったが3000は行けなかった

任天堂は一貫して「良い子の遊び」を提供している。対象年齢は10代がメインの極めて健全なゲームだ(敵を倒すゲームだが、暴力表現を慎重に避けているのが分かる。)。それがマーケティングなのかも知れないが、スプラ3ではゲームスピードをやや遅くし、20代以上をターゲットにするような企画もありではないだろうか。その意味で、本質はゲームスピードではない。ターゲットとするマーケティングの問題だ。

知恵の果実が毒饅頭か(ソーシャル性問題)

任天堂は業績の悪かった一時期、旧来のソフト売り切りモデルから抜け出せず、スマホゲーのような課金モデルに乗り遅れたと非難された。その指摘が必ずしも正しくなかったことは、現在の業績が証明しているが、それでも「ソーシャル性」はゲームの魅力の一つである。

多くのソシャゲは、武器や装備を売っているのではない。コミュニティという場を提供し、プレーヤーはそこでの地位を買うのだ。それは、人間にとって本質的に抗い難い魅力であるように思う。

スプラ にはチャットもない。ソーシャル要素は完全にtwitterやDiscordなどで外部化されている。それは任天堂がソーシャル要素が危険であることを十分すぎるほど理解しているからだろう。実際、チャットが荒れて傷つく人も多く、少なくとも小学生も含むスプラのターゲット層にはそぐわない。

だが、例えば、ビクトリア&アルバート博物館での企画展示を、ゲーム内で再現するような試みもあっていいのではないだろう。ソーシャル性はあるが、スプラ自体をコミュニティの場として位置付ける要素があってもいいように感じる。

スプラの広場絵は数少ないソーシャル要素。センスと技術備えた才能が集う。
ゲーム内美術館で投票付きの展示会なんかも楽しそう。

良い子の遊びからの脱却(コンペティション問題)

スプラの公式大会はスプラトゥーン甲子園といい、地域ごとの予選を勝ち抜いて全国大会がある。それはそれで悪くないが、企画が小学生向け、よくて中学生向けである。

その後、プロ野球機構(NPB)とコラボした大会も開催され、ハイパービームがGG boysを破って優勝したときは世代交代を感じたものだが、それでもフォートナイトのソロ優勝の賞金額が3億円には見劣りする。

賞金額が全てとは思わないが、任天堂がコンペティションに力をいれていない事は明らかだ。スプラがいまいち海外での盛り上がりに欠ける理由の一つが、この公式のコンペティションへの力の入れ具合だと思う。大きな大会があれば、プレーヤーのモチベも上がり、参入が増えてさらにゲーム自体が活性化する。そういう正のフィードバックループの構築を真剣に考えていないように感じるのだ。

ソーシャルが諸刃の剣であり、任天堂が慎重に距離を置くのは理解できる。しかし、競技としてのスポーツ化を推進しない理由があるだろうか。スプラ3では、競技化をぜひ推進して欲しい。

お気に入りのツイートと動画

ぴょん

最強チャーに、この人の名前をあげる人は多いと思う。この動画1戦目のモンガラは、文字どおり無双。最近は他のうまいチャーも増えたが、この人はプレーが鮮やかで華がある。ほっこりした人柄も人気。

【スプラトゥーン2】ぴょん!チャーで無双してしまったw

はんじょう

スプラの配信者としては多分最古参。腕は今となっては、そこまで強いという訳ではないが、エンターテイナーで楽しい動画が多い。下記の「誰も倒さないナワバリバトル」シリーズは「キルじゃない」というスプラの楽しさがよく現れている。

【スプラトゥーン2】誰も倒さないナワバリバトル 1つの悲劇が起きた

ちょこペろ

泣く子も黙るガチマの王。多くのプレーヤーが3000を目指す中、全ルール同時3000や3100まで達成してしまう異次元ぶり。3100の時、私は初めてスパチャした。下記の動画は全ルール3000達成時のアサリの動画。プレーが張っていて緩みは一切ない。ややマンネリしていたスプラ 界隈を一気に再起動した。

アサリ3000目指す配信

シャイニングアッガイ

漫画をベースにしたネタ広場絵が秀逸。下記はヒメちゃんが歌うDear Senpaiという特殊ステージのギミックをベースにしたもの(だったと思う)。他にもジョジョネタとかがあり、どれもセンスがあり笑わせてくれる。

すずきパブろー

上のププテピピックのネタもパブろーさん。下記は、アンクレットのギアが登場したとき、イカちゃんの素足が可愛いと話題になったときの投稿。そうだよな、ゲソだよな。センスのカタマリ。

みなわけさんは、この投稿しか知らないけど、普段は血で血を洗うマンタマリアの休日って感じ。ソーシャル性が足りない、という指摘をしたが、一方でこのようなイラストはソーシャル性を外部化するからこそ可能なのだと感じる。こんなに幸せなイラスト、ゲームがあるだろうか。

最後に

いい歳こいたおっさんが、ゲームに2100時間とか狂ってるかも知れないが、このゲームには経験しておく価値がある。辞めたのは、飽きたからではない。際限なく時間を取られることから自主規制である。

現時点ではスプラ3の情報は少なく、どのような形でリリースされるのかは分からない。しかし、それは、任天堂の「遊び」に対する洞察が遺憾無く発揮された、鮮やかなインクで彩られているに違いない。

スプラ3も買うだろう。ありがとう。

知人と

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