秩父貧困旅行記、日々の責任と憂鬱の代償で手に入れた束の間の自由

日常

トイレに本を置いている。大体一度読んだ本で、少しずつ読み進めているのだが、今読んでいるつげ義春の『貧困旅行記』が面白い。鄙びた温泉宿、干されたままの洗濯物、俯き加減の女、影の濃い男の背中、、、旅に出たくなる。ということで3連休最終日に久々に秩父に行ってきた。

祝日だが7:30に起床しゴミ出し。そのまま池袋まで出てラビューに乗車。車中で『貧困旅行記』の続きを読むつもりが、昨日設定したgithub actionsを使ったXのbotが機能しておらず、AIに聞きながら修正していたら寝る間もなく西武秩父に着いてしまった。

秩父には打ち捨てられた民家も多い。

大きな街道沿いの建物もこんな感じ

住みたい。が大変だろう。夏暑く冬寒い。

と言っても秩父に行ってもやることがないため、UNICUS秩父で『遠い山なみの光』を見る。カズオイシグロは、『日の名残り』、『私を離さないで』と映画・小説を読んできた。特に『日の名残り』の映画は好きな作品の一つである。あまりこの作品を好きと言いたくないが仕方がない。

観ている途中はやや退屈したが、イギリスパートと長崎パートが断絶しており、この状態から何がどうなって現代のイギリスに着地するのか普通に気になる。また、カズオイシグロに共通する取り返しのつかない人生の苦味のようなものがよく出ていた。帰ってから調べるとデビュー作らしい。

終わってから寺坂の棚田に歩いて向かう。秩父関係者のXを複数フォローしており、稲刈りと彼岸花が季節であることを知った。最近はアニメの影響か彼岸花ではなくリコリスというのが多いかもしれない。途中のラーメン屋で昼食。ここは以前も来たが普通に美味しい。

秩父と飯能を結ぶこの地域の大動脈=299号沿いの大金星。味は「はやし田」に似ている。

寺坂棚田は白い彼岸花が多くて意外だった。写真を少し撮り、そのまま丸山鉱泉に向かう。ここにはもう何回来たか分からない。泊まった事もある。冒頭に紹介したつげ義春の『貧困旅行記』を読んで、まず思い出したのはここだった。日帰り入浴する。

白い彼岸花、黄色い棚田の稲穂、工場の煙突、武甲山。

受付は元気のいいお兄さんだった。運営が変わったのだろうか?名物?の長い渡り廊下を降りて風呂場に行くと、一人先客がいた。いつもは誰もいないことが多いので意外だったが、潰れてもらっては困る。3連休の最終日に丸山鉱泉を選ぶ同士に共感を覚える。湯温はちょうどよく、通ってきた渡り廊下から丸見えの露天風呂は涼しい風が渡り気持ちいい。

丸山鉱泉名物?大浴場に向かう長い渡り廊下。

大浴場の隣には20畳ほどの休憩スペースがあり、湯上りに冷水を飲みながら『貧困旅行記』のつづきを少し読むが眠くてすぐ眠ってしまった。カップルが1組いたが、同じく寝っ転がっていた。薄暗く、ここではそれが正しい所作である気がした。実はこの時間を一番楽しみにしていたのだが、冷房の音がうるさく、また寒いくらい効いていて長居できなかった。この点がやや残念だった。

放飼いのニワトリ。

15:30ごろだろうか?丸山鉱泉を後にして秩父市街に戻る。西武秩父駅までは3.5 km。普通の人は少し徒歩には遠いと感じるだろうし、299号沿いは交通量も多くうるさくて面白味もないが、散歩である。モンベル で買った3点式?サンダルがいい感じで、結構な距離を歩いても足が痛くならない。

帰りのラビューまでまだ少し時間があったので常識では考えられない行為=旅先でBOOK-OFFをまたやってしまった。特に何かを買う気はなかったのだが、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を3冊買う。再読だが実に20年ぶりくらいである。最近100分de名著で取り上げられたのか中古本も安くないなと思っていたところ、1巻・2巻が100円で、3巻が700円で売っていたのだ。ただ、劣化が結構あるので売却を考えたら却って高くついたかもしれない。

夕方のラビューで帰路に着く。車中で『ねじまき鳥クロニクル』を読むが面白い。日常に入り込む小さな違和感。。。先が楽しみである。

取り止めもないが、たまにこういう小旅行にふらっと思いつきで出かけられるのは、自由であることの証左だろう。休みがあり、金銭的余裕があり、時間があり、行きたいところに行き、買いたいものを買い、誰に気にする必要もない。それは日々の責任と憂鬱の見返りだが、いつか自由だけを享受することができるだろうか。

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